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最後の5月

1086年5月。
新緑映える5月1日。
ロートレックの開店の日。
この5月に閉店の日。
32年間泳いで来た日々を思う。
開店の朝、オーブンに火を入れた。
その音が今は懐かしい。
過去も未来もなく、今を生きるのが精いっぱいな毎日が始まる。
ジャズも3年間一度も聴かない日々。
本も読まない、どこにも行かない日々。
毎日毎日を終わることだけが仕事だった。
時間もお金も気持ちの余裕もなく。
ひたすら泳いでいた頃が遠い。
開店4年後。
再びフランスに出かけた。
働いてたお店を訪問。
仲間達が温かく迎えてくれた。
それから遠い時間が過ぎた。
1999年、2011年と2度ロンドンに行った。
20歳の頃の私に会いに行く。
そこから私の人生は始まる。
多くの人達に助けられた。
なぜかいい人達に出会う幸運に恵まれた。
フランスイタリアのレストランの厨房にも立てた。
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以来、旅の人生がはじまる。
旅のために仕事をする。
毎回毎回旅のために日記を書いた。
絵も描いた。
旅も恋も同じで始まりと終わりがセットになってる。
だから、毎回毎回真剣勝負だった。
旅の終わりも恋の終わりも知るからこそ、命を賭けた。
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私のレストランも同じだ。
お客様にも真剣料理してきた。
さらば、わがロートレック。
また私は旅に出ることにする。
今度はここには戻らない。
潔く立ち去るけど、これまで出会ったすべての人達を抱きしめたい位。
明日は新世紀だ。
旅立ちに相応しい明日。

by lautrec2kagoshima | 2019-04-30 14:51

20年ぶりの再会劇

20年前、毎月おいで下さった方が遠方からいらした。
まだ移転したての頃だ。
私も未来だけを見つめて走り出した頃。
今より未熟な料理、しかし熱意は今以上に。
ある日彼らがベネチアに行くことに。
ベネチアには4回ほど訪問してるので、話が盛り上がる。
どうだ、こうだと。
そして20年の時が流れる。
20年は長い。
20年は人生の開花期。
お互いの不在の間、違う場所で呼吸してた。
車がやがて到着する。
ドアから出てくる。
20年の長さは1秒になる。
顔と顔。
その頃の顔、声、表情。
変わらぬ印象だ。
時は流れても気持ちは不変だった。
店内に入るなり、懐かしい、変わらないなあ。
ポルトガル語でsaudade.サウダージ。
哀愁の意味。
分かるなあ、その気持ちが。
やがて時間は過ぎて彼らの見送る。
小さくなる車。
手を振る姿。
出会いと別れ。
なんとも美しい春だ。
恋は錯覚。
友情は自覚。
だから永遠に生きるのだろう。
友よ、また会おう。


by lautrec2kagoshima | 2019-04-28 18:10

残り時間

仏蘭西料理の世界に強い憧れを抱いた時代。
その時間もあと少しだ。
長距離ランナーの孤独。
常に味との対決勝負。
時に敗退、たまに勝利。
その繰り返し。
料理日記を読み返す。
楽しさと苦しさ。
そのブレンドが今初めて美味しく感じられる。
一番恋したのはフランス料理。
一昨日日本橋の裏道でカフェした。
パリに本店を持つカフェ。
ラスパイユにあるカフェだ。
ギャルソンはフランス人だ。
気持ちのいい挨拶で始まる。
今度からは日本橋が仕事場になる。
私は進化する、更に。
残り時間というより継続時間。
休まないで継続していく。
楽しみな未来が待つ。
幼い頃を過ごした種子島に行こう。
海を見て世界に憧れた少年時代。
ポルトガル船が漂着した島。
そのポルトガルにも2度行った。
残り時間、フランス料理で楽しもう。

by lautrec2kagoshima | 2019-04-26 15:57

歴史の瞬間

何が思い出ですか。
1年に1,2度仕事を離れて世界に飛び出した自分流バカンスです。
何が目的でしたか。
フランスの空気を吸い、カフェに座る。それが目的です。
どこが一番お気に入りですか。
パリだと18区や19区です。
どうしてですか。
移民の多い地区はパリらしくないのですが、何か生きる力を感じます。
パリでの仕事は何が思い出ですか。
やはり言葉の点で苦労しました。仕事は出来ても休憩時間に雑談は無理でしたから。
日本人と違うところは?
彼らは個人主義でわがままですが、仕事にはプライドが感じられました。
バカンスで深呼吸するからこそ、いい仕事ができるんだ、と同音異句。
外にどこに再訪したいですか。
シチリア島です。3回行きました。大好きなギリシャ神殿もあり、その場所で昼寝しました。
オリーブの木の下に昼寝すると、なんだか哲学してる気持ちです。
今後の予定は?
東京ベースに故郷やフランスで暮らす計画です。


by lautrec2kagoshima | 2019-04-08 15:05

春が来た。

春が来た。
私のレストランも春にオープンした。
若者らしく、向こう見ずで夢だけを見てパリを離れた。
15年余り、故郷を振り向きもせず、東京を起点に世界に飛び出してた。
最初は小さなケーキ店を開いた。
フランス製のタルトやミルフィユ。
限られた固定客が私を支えてくれたものだ。
販売戦略は分かる人達だけへの製造だった。
やがて大好きなフランス料理を始めたくて近くに移転した。
そこでは一晩一組限定のおもてなしをポリシーに。
完璧なフランス流でとの想い。
やがて常連が増えていく。
このままでは面白くない。
1か月の休暇を取る。
勿論お金はないから、銀行から借りた。
先行投資、は美辞麗句。
ボルドーでレンタカーを借りた。
毎日毎日走る。
お目当てのレストランを探すのだ。
途中、おばさんのルノーに追突。
マダム曰く、お怪我はない?
フランスは車なんか道具に過ぎない。
へこんでもへこませても平気社会。
2000キロ走り、飯を食らう毎日。
そんな日々を今思い出す。
今はそんな勇気などなく、最近はフランスに行けど、ただただ動かないで座る毎日。
後2か月でここも終わる。最後の仕事は初心に帰り、仕上げに精出そう。

by lautrec2kagoshima | 2019-04-08 14:54
何事も新鮮は魅力だ。
昨夜、新米女性ボーカリストと出会った。
まるきりジャズは知らなそう。
何をどう歌うのか、本人は何も知らな風。
かつての私がベースを始めた頃を思い出す。
どう弾いて、いかに和音を解釈し、いかにラインを作りだし。
どんな曲がいいんですか。
何を最初に覚えたらいいんですか。
この歌詞はどんな意味ですか。
誰を手本に聴いたらいいんですか。
まるで私はにわか教師みたいだ。
いろいろと指南する。
今夜は時間がないのでまた機会を見つけて。
今の時代だ。
フェイスブックを通してお互いに曲などについての会話。
時代は大変化。
私など通信手段に置いてかなり遅れた人類。
世の中、時間短縮は便利だけど、何か忘れてる気がして。
物理的には便利だが心理的には即物的かな、と思う。
未来のボーカリスト。頑張れ。
歌は全身で歌うんだ。
歌は魂の叫びだ。
とかいうと、うんうんとうなずいてた。

by lautrec2kagoshima | 2019-04-07 17:07
4月2日3日の二日間、さよなら会をしました。
レストラン史を彩る最後の晩さん会です。
約40名の方がお集まりに。
始まりがあるから終わりがある、とは分かるものの、やはり最後となると。
つい先日、フランスから帰国した気がするけど。
過去の時間の蓄積は脳科学ではとても薄い層らしい。
だから10年前が昨日に感じられるそうな。
過去時間をその長さだけ感じられる脳が欲しいけど。
潔く私はロートレックを立ち去る。
一度決めたら振り返らないし、戻らない。
今日まで私とレストランを育ててくれた皆様にお礼を述べた。
一期一会。
料理日記やレシピはすべて処分する。
記憶の中に残そう。
日記も処分対象だ。
ただし旅の記録だけは残そう。
2日間のさよなら会。
美しいまま、生きたまま、流れるまま。
昨夜はピアノトリオでのライブ。
バラードでのベースラインに想いを託す。
音は嘘をつかない、つけない。
言葉は嘘をつける。
言葉は時に武器となり、相手を一撃する。
音は余りに美しい。
奏でる人間は音よりレベルが低い。
さあ、春だ。
私は新しい未知の世界を歩きだす。
わくわく。
昨日までの私に別れを告げる。
新生する。


by lautrec2kagoshima | 2019-04-07 15:55

最後のお見送り

外でタクシーが待つ。
最後のさよならとありがとう。
30年来のお客様。
愛犬が無くなり、お母様が無くなり、その度にここでの晩餐。
長い間、なんでも話題にして話してきた人達との別れ。
またね。
あり得ないんだけど。
お元気でどこかで会いましょう。
あり得ないんだけど。
恋人と別れる事なんか軽いもんだ。
その代理がいるから。
30年はまるで親戚以上の親しみだから。
明日からそんな人達とのお別れか、と思うと。
私を育て刺激して下さる人達ばかりだ。
もう振り返らない。
一度落ちたリンゴがもとに戻らないように。
お世話になったここの見習いやフランスの同僚達。
やがてタクシーは闇に消える。
さよなら。
なんと美しい日本語。
au revoir.
フランス語でさよなら。
この意味は再会の意味。
だからこそ切ない響き。
かつての親しいフランス人と別れる時にもau revoirと。
しかしもう会うことは2度となかったものだ。
夢はかけらとなり夜空の星屑となった。

by lautrec2kagoshima | 2019-04-01 15:20

今日から4月

最終ランナーはいよいよゴールへ向かう。
3月はいつものゲストに常連さんが押し寄せた。
明日とあさってはさよなら会だ。
出会いと別れはセットだ。
いつも旅の終わりに世界の空港から旅とのさよなら。
カンボジアやチュニジアからの帰国。
町の光を眼下に旅に別れを告げた。
32年間、走り回る毎日が終わる。
と同時に新しい自分の旅が始まる。
歩いた世界、食べた世界の屋台
出会いと別れ。
夢見た事はすべて破片として夜空に消えた。
私の中での夢は宿題。
その宿題はほとんど終えた。
ロートレックは永遠に。
パリを去る朝の雪が昨日のようだ。


by lautrec2kagoshima | 2019-04-01 15:00

私達夫婦が経営する南仏・地中海料理のお店「LAUTREC(ロートレック)」の毎日の様子を綴ります。


by lautrec2kagoshima