<   2008年 11月 ( 11 )   > この月の画像一覧

記憶の中のサービス

巴里モンマルトルの坂道にある小さなビストロ、ルマキ。
席数20位の小粋な料理店だ。
以前、毎年この店で食事した。
年に一度の訪問なのに、マダムは私を記憶していた。
bon soir,sonoda.Ca va?
おひさしぶりね、お元気ですか?
給仕の隙間を縫い、マダムが私に話かける。
この店は南仏料理が売り物なのよ。
このアイオリソース美味しいですね。
他愛も無い会話の中にフランスのエスプリが現れる。
デザートの頃、皆さん、このショコラとっても美味しいのよ、とマダム。
それぞれの食卓に自身で配る。
見知らぬゲスト達が拍手して、彼女の気配りをたたえる。
このビストロこそ、日本の名料理人、辻静雄が一番愛した食卓だ。
ミシュランの星もゴミヨーもクレベールも点数はつけない・
しかし、名店である。
サービスと味の点で巴里の著名人に長い間、愛されてきた。
翌年もまたマダムが、bon soir,sonoda,Ca va?
同じ笑顔で迎える。
ただそれだけの事だ。
微妙な距離感のあるサービスほど印象に残る。
定型なサービスではなく、かといって極度のものでもない。
黒子的なのだが、気持ちが伝わる。
気持ちが伝わるが、黒子的だ。
まさにプロフェショナルな世界といえる。
ルマキは星ありレストランより居心地がよかった。
サービスの原点はレストランに在り。
f0196856_20322355.jpg

[PR]
by lautrec2kagoshima | 2008-11-30 20:29

機内サービス

世界のエアラインのサービスランクが毎年公表される。
安全面、機内食、乗務員の接遇態度などの観点から、判断される。
乗客にとり、一番そのサービスの程度を感じるのは、乗務員の接遇だろうか。
昨年、2度欧州線のビジネスクラスを利用した。
大韓航空とエアフランス。
両者の違いは相当なものがある。
アジアのサービスはアジア人しか理解できない・
料理の配膳。時にひざまずいてのサービス。
何か料亭の個室感覚で、思わず笑いがこぼれる。
料理の説明から始まり、カフェまで完璧な料亭サービスだ。
不満はないが、自由が無い。
他方、フランス人乗務員。
ボンジユー。
気軽にサービスが始まる。ただこれだけである。
ほかに何の特別な配慮も気配りも無い。
サービス過剰な部分がない分、こちらは楽でいられる。
話かけると、もう話に花が咲き、個人的な時間にこちらにやってくる。
パリのどこに住んでるの?東京の美味しい所教えて。。
これがアジアの航空だと、サービスが膠着してるので、個人の交流は先ず無い。
サービスは形式ではなく、その雰囲気と相手により、自由に変更する事だと知る。
レストランも同じだ。
そしてエコノミーもビジネスもサービスの根幹は同じだ。
ただ座席が広いのと、飯が少し多いだけの違い。
墜落したらどちらもおなじ運命なんでしょうか?
それともクラスにより生存率が変わるのでしょうか。
個人的に私はフランス流の大人のサービスが心地いい。
[PR]
by lautrec2kagoshima | 2008-11-28 08:22

私流サービスの極意

どんなゲストに一番サービスをしたいか。
お金を沢山、使う人。
沢山、高級なボルドーを飲む人。
毎月来てくれる人。
そのどれも不正解です。
一番サービスをしてあげたいゲストは、笑顔がよくて、心の素直な人。
第一印象で全てが分るから、不思議です。
サービスする側とそれを受ける側の気持ちが合うか否か。
初めてのゲストでも心の交流ができます。
以来、自宅に呼ばれたり、個人的な交際が始まります。
高いサービスとは両者の交流が成立するかどうかでしょう。
完璧なサービスはありません。
個人対個人の関係です。
高飛車なゲストは軽蔑の対象に過ぎません。
高慢で知識を振りかざすゲストなど最高の軽蔑が与えられます。
来て欲しくないゲストも時にいます。
挨拶すらできない、食卓で携帯したりメールしたり。
どのようにサービスしていいのか
日本人は要求し過ぎな部分も多々、あります。
西欧では邪魔にならない程度のサービスを心地よくします。
あるいは時に冷たい感じも受けます。
しかし、成熟社会故、お互いの地位と責任をわきまえた両者。
スマートに流れます。
私のレストランでは99パーセントが成熟した関係です。
食事マナー。
美味しく食べる事。楽しく食べる事。
それ以外になにが必要なのでしょうか。
次回はフランスやイタリア、機内サービスなどの情報をお届けします。写真は友人マスバタンの経営するパリのレストランです。
f0196856_21131972.jpg

[PR]
by lautrec2kagoshima | 2008-11-24 21:13

ボジョレの夜

大騒ぎの夜が終わる。
ソムリエ氏のアドバイスを参考に前菜から仕込んだ。
新酒に合うボジョレ地方の伝統料理。
鴨、ベーコン、ソーセージを主体に前菜を早朝から仕込んだ。
30名の抽選に当たった?厳選された飲み食い人種達。
運よく来れた人達が全員7時に揃う。
今回はフルート奏者の序曲ではじまる。
まるで中世の教会の雰囲気だ。
今まさにお祭りが始まる予感のフルート。
乾杯でお祭りに灯がともる。
ソムリエ氏の選んだ新酒がどんどん吸い込まれていく。
パリの居酒屋よろしく、見知らぬ人達の交流が始まる。
10時。
夜も更けて来た。
12月28日の最後の晩餐をやろう、と決まる。
ソムリエ氏いわく、最高のボルドー、シャトウもので行きましょう。
そうだ、予算無しで突き詰めてみようか。
すぐに定員満杯となる。
大人たちの遊び場の最高の場所でありたい。
午前24時に鍵を閉めた。
大騒ぎの夜の後、一人、部屋で呆然となる瞬間が来る。
[PR]
by lautrec2kagoshima | 2008-11-21 17:44

ボジョレ解禁

定例のボジョレ解禁の夜。
取れたての新酒が届く。
フランスでは鴨狩猟の解禁の時期だ。
それにあわせて、鴨料理も本格化する。
一度、ボジョレの時期、ブルゴーニュの美食の町、ボーヌにいた。
小さな旅籠やの親父さんが笑いながら、夕方、山からもどった。
どうだい、この美味しそうな鴨。
その夜、料理人でもある親父さんが鴨を調理した。
酸味のあるベリー類のソース、カシスを用いたいい味。
単にローストしただけの、しかし、野生の鴨は上手いものだ。
確か1990年ごろ、まだ充分に若い私は2週間連続の美食が可能だった。
原点を求めて、シチリア王国に3度もたずねた。
片隅の田舎の定食屋専門に潜入した時代だ。
明日の夜。
いろいろな人種がやってくる。
鴨料理を含めてボジョレと共に騒ごう。
ピアノ弾き、フルート奏者も参入して、まるでカルチェラタン。
不景気な時代、騒ぐ方が賢明か。
年末も最後まで大騒ぎの予定です。
f0196856_84453.jpg
f0196856_861528.jpg

[PR]
by lautrec2kagoshima | 2008-11-19 08:04

独り舞台

初冬の午後、定例のボサノバライブ。
急遽、相棒の急用で一人舞台に。
突然の孤独がやって来る。
ギター抱えて、ライブに向う。
飛行機でイタリア南部へ飛ぶ思いだ。
全てが一人でその責任を抱えるからだ。
さて、何演奏しようか?何、唄おうか。
何も決めないででかけた。
14,5名のゲストがすでに私を待つ。
譜面広げて、適当にめくる。
宝くじ感覚で曲を決めた。
リズム、テンポ、全てがアドリブで転開し始める。
自分がいかに乗るか、それでゲストも乗せられる。
最近、友人が鯛、かつおなどを釣り上げた。
どのようにして美味しく食べるか。
音楽と同じで、譜面もレシピもないという共通点。
ボジョレの夜。それに相応しいメニュを今夜、深夜に決める。
決めたら、もう後は製作のみだ。
独り舞台。いつも一人旅。
一人でいることが一番の時間だ。
一人でステージを作るのは最高に面白い。
f0196856_18101694.jpg
f0196856_18103294.jpg

[PR]
by lautrec2kagoshima | 2008-11-17 18:10 | 音楽と生演奏

教室に冬到来

寒い冬仕様にフランス南西部の郷土料理を作る。
セロリ、人参、たまねぎ、豚肉、ソーセージ、大豆、にんにく。
鍋に素材を投げ込み、1時間煮込む。
蓋をして、弱火で煮込む。
全ての素材のだしが浸出して、全体にある種の調和をかもし出す。
プロバンスのオムレット。
卵とチーズに南フランスのハーブを加える。
ただそれだけ。肝心は塩の具合です。
サラダに鮭を軽く燻製にかける。
上質のオリーブオイルとバルサミコ。
ゲランドの塩を一振り。
昨夜、友人のソムリエ氏と深夜まで談笑した。
やはり、出来合いの、ただ温めるだけの料理は馬鹿のすることだと。
看板が泣くか、自分が泣くか。
その志が全てであるからこそ、自分の手のになる料理ができる。
こんな単純な事が消えて久しい。
料理教室でさえ、自分達の手でつくるのだから。
3品ともミシュラン1星はいけそうだ。
これからの季節。
煮込み料理の得意な私にはいい季節が来たものだ。
[PR]
by lautrec2kagoshima | 2008-11-13 21:29

我輩は猫である

我輩約10名は猫です。
レストランの周辺に住んでいます。
近くに山があり、そこにすんでいます。
おなかが減ると、降りていきます。
やさしいシェフは時々、ご馳走も作ります。
昨夜は遅くにひらめと牛の煮込みでした。
おまけにボルドーのシャトウものの赤ワインまで。
さすが猫親父だけが飲んで、子供達はすぐに寝ました。
生まれて2か月の3人の子供達はお母さんと部屋に戻りました。
半分野生ですから、病には勝てません。
日常をシェフのご馳走で健康を保ちます。
これまで100人くらいの仲間がいました。
しかし、病や家出、果ては自殺、失業と重なり、何時の間にかいなくなりました。
猫の主人である私は人間社会を観察するのが趣味です。
最近、お金がどうのとか、保険がどうとかで世界が揺れている様子。
欲が深い感じです。
私らはご飯さえあれば充分です。
そして冬、温かい昼寝の場所さえあれば。
さて、今日のシェフのご飯まだかな?
雨の日は外で遊べないのでおもしろくないなあ。
お、ギターが聴こえる。
そうだ、シェフのライブだよ。みんなで聴きにいきたいなあ。
これは私の大切な家族です。
f0196856_853564.jpg
f0196856_855894.jpg
f0196856_863148.jpg

[PR]
by lautrec2kagoshima | 2008-11-09 08:03

悪魔の誘惑

いくつかの業者、東京からの継続的案内。
それは何か?
牛の赤ワイン煮、オマールのフリカッセ、グラタンドフィーヌ、ミルフイユ。。
全て出来合いの、ただ温めるだけの完成品。
何も作らなくても、誰でもただお皿に乗せるだけ。
この町の業者いわく,私のレストランだけが、一つも出来合いを使わない。
この当然すぎる職業観念が失われて久しい。
ひどいレストランや料亭は8割以上が出来合いだそう。
ただ美しくお皿に乗せる。
これだけが仕事らしい。郊外型のドライブインなら分る。
安くて早くて便利で。
しかし、一応、レストランとか懐石と銘打つ以上、プライドが欲しいものだ。
料理人の堕落はインスタントに走る事から始まる。
東京からの案内も写真はきれいだし、使いたい気持にさせる。
しかし、ワザワザフランスまで暮らし、通い、それこそ家2,3軒分の投資。
死ぬまでその誘惑には乗らない。
これでも意志は強い方だし、何より私に伝授した多くのフランス人に申し訳ない。
ますます手抜きの料理店が増えては消えるだろう。
志の高さとお店の伝統は平行すると考える。
99人の素人が騙せても残り一人のプロに見抜かれたくない。
これは音楽も同じ事だ。
今朝も誘惑する業者が来た。
追い返した。2度といんちきな出来合いを見せないで。
2006年の春、本物の洗礼を浴びた注目のパリ11区のレストランにて。
f0196856_23104530.jpg

[PR]
by lautrec2kagoshima | 2008-11-04 23:10 | レストラン便り

カフェ文化

フランスのどんな田舎にもカフェがある。
地元民の集合場所でもあり、夕方は飲み屋にもなる。
旅の途中、何時でも私はカフェに飛び込む。
雨の午後、寒い朝、空腹な深夜。
最初に覚えたフランス語がカフェでの注文だ。
パリ時代、帰りに疲れた体を癒したカフェ。
なじみのマスターが、元気?
そうかい、仕事大変なんだ。いつ日本に帰るんだい?
来月です。そうかい。
別れの時、マスターが私に、元気でな。またパリにきたら、ここに寄りなよ。
数年後、そのカフェにマスターを訪ねる。
もうそのカフェはオーナーが変わっていた。
カフェは時代とその人の生き方を反映する。
映画、アメリの舞台となるモンマルトルのカフェ。
なんだ、私の通ってたカフェだ。
何の変哲も無い昔のカフェだ。















#IMAGE|f0196856_234306.jpg|200811/03/56/|mid|1024|768#]
f0196856_23134330.jpg
f0196856_23144176.jpg
f0196856_2315263.jpg

[PR]
by lautrec2kagoshima | 2008-11-03 23:12

私達夫婦が経営する南仏・地中海料理のお店「LAUTREC(ロートレック)」の毎日の様子を綴ります。


by lautrec2kagoshima